精神科病棟での出来事

ある電機メーカーの営業部に勤務しているわたしは、会社が発表した新しい家電製
品の流通ルートの拡張に追われる事となりました。
プレス発表から発売までの何か月かは、来る日も来る日も関東一円の営業所や問屋、
量販店を走り廻るという状態が続き、営業車による走行距離は、一日平均三百五十
キロにもなりました。
これは、この頃たまたま乗ったタクシーの運転手が、話を聞いて絶句した、という程
の距離です。
元々身体が丈夫でもないわたしが、そんな無茶を続けたらどうなるか、薄々気が付い
てはいたのですが、かと言って手を抜く訳にもいかず、わたしは日々積み重なる疲労を
感じながら、それでも毎日業務に精励していました。

しかし、新製品が発売された直後、わたしは胃の付近に猛烈な痛みを感じて倒れ、救急
車で都内の某大学病院に運ばれたのです。
案の定と言うべきか、診察の結果は急性胃潰瘍でした。
過労と精神的なストレスによって、胃の外壁スレスレまで大きな穴が開いていたのです。

直ちに入院、手術という事になりましたが、幸いにも術後の経過は良好でした。多少
揉めましたが労災も認定され、わたしは完治するまで、ゆっくりと入院する事になりま
した。
手術跡が塞がるまでは安静にしていなければなりませんでしたが、一週間もすると、
退屈で仕方がなくなりました。

それまで激務に追われていた為、余計にそう感じるのかもしれませんが、何もせずに
寝ているというのは本当に苦痛です。
その反動もあって、手術の傷口が塞がると、今度は逆に病院内をうろうろ歩き廻る様
になりました。

日本国内でも有数の規模を誇る大学病院だけあって、その敷地の広さは並大抵のもの
ではありません。
体力を付ける為にもどんどん歩きなさい、という主治医の忠告もあって、わたしは
万歩計を腰に付け、毎日の様にその広い大学病院の敷地を徘徊しました。

最初は一日三千歩。その歩数が少しずつ増えるに従って、わたしの歩き回る範囲も次
第に広がっていきました。
今まで行った事がなかった二ブロック先の建物まで足を延ばしてみたのは、一日の許
容歩数が五千歩を越えた時でした。

中庭の遊歩道を歩いて、建物の近くまで辿り着いたわたしは、鉄筋三階建てのその建
物と周囲の敷地が、高さ二メートル程の鉄条網の柵で周囲を取り囲まれている事に気
が付きました。
「…なんだ、これ?」

建物そのものの形状は、他の病棟と何ら変わった所は無く、周囲の敷地も、公園の様
に丁寧に造成されていました。
その敷地の中で、わたしと同様入院患者らしい人達が、看護士と思われる服装の人達
とともに、散歩をしていたり、遊歩道のベンチに座って休んだりしているのです。

その様子が何ら不自然なものでは無いだけに、わたしとその風景を隔てている柵が、
ますます不自然なものに思えてきます。
「………もしかしたら…」
わたしの頭に、ある考えが思い浮かんだ丁度その時、車椅子に乗った入院患者と、そ
の車椅子を押す看護士らしい若い男が、柵のすぐ向こう側を通りました。

「あ…」
車椅子に座ったその患者が、はっと驚く程の美少女だと気が付いたわたしは、思わず
声を上げてしまいました。
しかし、その声に反応したのは当の少女ではなくて、車椅子を押していた若い男の方
でした。

「何ですか?」
胸に『高島』という名札を付けたその男の、抑揚の無い無機質な口調に、わたしは少
し腰が引けましたが、少女に対する興味の為、思い切って口を開きました。
「あの…あちらの病棟に入院している者ですが、この付近に初めて来まして…」

ややしどろもどろになりながら、どう訊ねたものか悩んでいたわたしに、高島は質問
を先読みした様子で、こう言いました。
「ああ、ここですか。精神科の専用病棟です」
「精神科…」

「そうです。色々な事情を考慮した上で、この様に一般病棟と隔絶されていますので、
ここから先は入らない様お願いします」
「………」
高島と名乗る看護士らしい男の発言を聞き流しながら、わたしは、鉄条網越しに改め
て、その少女の横顔を見つめました。

年齢は十二、三歳くらい…いえ、もしかしたらもっと幼いかもしれません。彫りの深
い端正な顔立ちが印象的な少女ですが、しかし、確かにどことなく視線が定まっていな
いし、知性的な表情も無いのです。どこか、ピントのずれた様な表情でした。
「………」

わたしは、その美しい少女の素性に興味を感じましたが、まさか看護士が、部外者で
あるわたしに病状を話すとも思えません。多少の心残りを感じながら、わたしは小さく
会釈し、その場を去りました。

ところが散歩を終えて自分の病室に戻ったわたしは、主治医の妹尾医師と雑談をして
いて、思いがけない話を聞く事になったのです。
「…ふうん、精神科病棟の方まで散歩してきたのか。大したものだけど、あまり無茶は
しない様に。それでなくても、無理がたたって胃に穴をあけたんだから」

妹尾医師は、そう言って笑いましたが、その時ふと、話題となった精神病棟の一件を
思い出しました。
「そういえば、小学生くらいの女の子も入院してましたね。あんな娘が精神異常だなん
て、ちょっと信じられないけど…」

「いや、そんな事は無いよ」
「え?」
「精神科病棟に入院してる患者には、子どもや、若い女の子が少なくないんだ。精神的
に脆いというか、まだ抵抗力が低い部分があるし、強い刺激にさらされて精神が破綻
するケースも少なくないから」

「外部からの、強い刺激…」
「まあ一番多いケースは、やっぱりレイプだね。」
「レイプ…ですか」
「ああ、それまで男と付き合った事も無い娘が力づくで処女を奪われたり、子どもが変
質者に捕まって長い間監禁されてひどい目に逢わされたりすれば、おかしくなって当
然という訳だ…」

そこまで言った妹尾医師は、わたしの深刻な表情に気がついた様子で、ふと口調を変え
ました。
「…い、いや、まあ、あくまでも一般論だよ。そこに入院してる女の子が、みんなそう
だ、なんて事は決して無いからね、誤解のない様に…」

診察を終えた妹尾医師は、そういって病室を後にしましたが、わたしの頭の中では、一
般論だと説明された妹尾医師の言葉が渦を巻いていました…すると、やはりあの車椅
子の女の子も、そんな目に逢って入院する事になったのだろうか…あんな、どう見ても
子どもにしか見えない娘が…

わたしの頭の中で、あの少女が、数人の男に囲まれてレイプされている場面が浮かび、
恥ずかしい話ですが、思わずパジャマの股の部分を膨らませてしまいました。

それから、数日ほど後の事です。体調がかなり回復して来たわたしは、それゆえ益々、
単調な入院生活に嫌気がさして来ました。
入院患者は午後九時が消灯時刻ですが、そんな時間に眠くなる訳はありません。
ある日の深夜、わたしはこっそりと病室を抜け出しました。

もしうまく行きそうなら、病院のすぐ近くにある二十四時間営業のコンビニでも行って
みたいと思い、夜勤の看護婦達の目をすり抜け、深夜専用出口からうまく庭に出たので
す。
しかし正門は警備員が詰めている筈なので、他に外部に出られそうなところが無いか
と、病院の敷地を外壁づたいに進みました。

ずっと歩いている内に、精神科病棟の柵まで来たわたしは、そこでようやく、足をか
けて外に出られそうだと見当を付けたのですが、いざ実行しようとした時、その柵の二
十メートル程先に設置されている扉の付近で、人影が動いた事に気が付いたのです。
どうやら、誰かが精神科病棟の敷地に入ろうとしている様なのです。
(…病院の関係者にでも見つかったら、まずいな…)

当然ながらそう思ったわたしは、慌てて近くの植え込みに身を隠しました。
しかし、どうやら人影は、わたしに気が付かなかった様子で、足を止める事も無く、
精神病棟の出入口に向かって歩き続けました。

ところが、その影が出入口まで辿り着いてドアを開け、入ろうとした瞬間、内部の照
明が僅かに洩れ、人影を照らした時、わたしは、その影が妹尾医師である事に気がつい
たのです。
「…?」

わたしは不審を感じました。外科医の妹尾医師が、なぜ精神科病棟に…それも、こん
な夜中、人目をしのぶ様に来なければならないのでしょうか?
長い入院生活で退屈していたせいもあって、心の中に強い好奇心が湧き上がって来た
わたしは、外出する予定を変更して、妹尾医師が入っていった精神科病棟のドアに近寄
りました。

思った通り、ドアは開いていました。
隠れて観ていた時、妹尾医師が施錠した様子が無かったからです。
ドアのガラス窓ごしに中の様子を伺うと、薄暗い照明の点いた長い廊下が伸びていて、
そこに人の気配はありませんでした。

ゆっくりとドアを開けたわたしは、病棟内に足を踏み入れると、音を立てない様に廊下
を進み、夜中の病院の薄気味悪さに身震いしながら、耳をそばだてて周囲の様子を調べ
ました。
何か物音がした、と気が付いたのはその時です。それが何かは分かりませんでしたが、
目の前にある上り階段の方から聞こえて来た、という事だけは確かな様でした。

最上階である三階まで上ると、さっきの音がまた聞こえて来ました。
どうやら音は、この階から聞こえて来る様です。
うす暗い照明に浮かんだ案内表示板には『個室病棟』と書かれてありました。

階段から首を延ばして廊下の様子を伺うと、左右に整然と並んでいるドアの内、ひとつ
だけ照明が漏れている部屋があり、物音は、どうやらそこから聞こえているらしいと気
が付きました。
もちろん、ここまで来たら引き返す事も出来ません。

意を決したわたしは廊下を進んでドアの前に辿り着き、小さなガラス窓から、そっと
室内を覗き込みました。
部屋の奥に、病院ではよく見かけるパイプ製のベッドが置かれてました。
わたしの方から見て横向きに置かれているそのベッドで…三人の裸の人間が絡まって
いたのです。

「…!」
室内灯に照らされたその光景をよくよく見ると、三人とも、わたしの知っている人物
でした。
さっき、この病棟に入って行った妹尾医師が、ベッドに仰向けに寝ていて、その妹尾医師
の頭をまたぐ様に、高島という看護士がベッドに立ち上がっているです。

そして…車椅子に乗っていたあの美しい少女が、細くしなやかな両腕を後ろ手に縛られ、
騎上位の姿勢で妹尾医師にまたがされ、腰を突き上げられていました。
前かがみの姿勢を取っている少女は、さらに目の前で、立ち上っている高島の下腹部に頭
を押し付けられていました。

高島のペニスを咥えさせられている様子でした前かがみの姿勢を取らされているその少女は、
まだ乳房のふくらみも殆ど…いえ、全くと言って良いほどない、子どもそのものの体型でした。
ほっそりと伸びた腕と脚がねじ曲げられて縛られた姿は、観ているだけでも痛々しく感じら
れました。

「う、う、うんむ…」
鼻から苦しそうなうめき声を漏らしながら、少女は二人の男に同時に犯され続けていました。
二人がピストン運動を強いる都度、丸みの無い痩せた身体がバネの様に動くのです。
「うう、で、出そうだ」

妹尾医師がそう呟き、より激しい上下動を始めると、高島もそれに呼応する様に、娘の口に
ペニスを突き立てた腰を前後に動かしました。両手で押さえつけた娘の頭がガクガクと動き、
口からクチュクチュという粘液質の音が響きました。
「うく」

ほぼ同時に、二人の動きが止まりました。
しばらくすると、全身をビクッビクッとけいれんさせたので、娘の中で射精した事が分かり
ました。
「ふう、良かった。メグミとはしばらくぶりだったな」

娘の裸身をベッドに横たえながら、妹尾医師が高島にそう言いました。
メグミというのが、どうやらその娘の名前の様でした。
「ええ、検査や面会やらで、手を出すのはしばらくヤバかったですからね。しかし、入院
継続が決まって、ホッとしました」

「ははは、そりゃまあ、レイプされたショックで入院したらそこで続きが待ってた訳だから
な。治るものも治らないだろうよ」
せせら笑う様に言いながら、ベッドの端に座っていた妹尾医師はメグミの裸身に手を伸ば
し、平たい胸に指先を這わせました。
「はあ、あう、ん」

十円硬貨大の乳輪の中央からチョコンと顔を出している、米粒くらいの大きさしかない茶色
の乳首を指先で摘み上げられ、引っ張られたりねじられたりすると、メグミは全身をビクビク
と震わせ、切なそうな声を上げました。
しかし、以前も見た通り、その目には理性が感じられません。

ドロンと濁った様な、視線の定まらない目をしているのです。
「………」
わたしはようやく、事態が呑み込めました。
レイプされて精神異常になったこの少女を、二人が病院側の目の届かない時間にオモチャに
しているのです。

考えてみれば、娘は正気では無いのですから、現場を見られない限り、バレる可能性は極めて
少ない訳ですし、もし娘が覚えていて誰かに訴えたとしても、精神病患者の言う事など、誰も
まともに信じる訳はありません…
しかし、何て卑劣な事をするのでしょう。

わたしは怒りで全身が震え、手術したばかりの胃が、再びズキズキとうずく様な感覚を覚え
ました。
わたしがもう少し感情を優先させる人間だったら、この場で部屋に入って、彼らになぐり掛
かったかも知れません。

でも、そんな事をしたら自分が夜中に病室を抜け出した事がバレてしまう。
一体どうしたらいいんだろう…わたしが悩んでいる間に、二人はメグミに対して、さらに
ひどい仕打ちを始めました。
「さて、今日は妹尾先生がメグミちゃんをたっぷりと診察してくれるからね」

そう言いながら再びベッドに上がり込んだ高島は、中央であぐらをかき、メグミの身体を引き
寄せて、赤ん坊を膝に乗せる様にうしろ向きに抱きかかえました。
その姿勢で彼女の両脚を左右に大きく広げ、妹尾に陰部をさらしました。
「………」

情けない事に、この時わたしは、息をころしてメグミの秘部を覗き見ていました。
今しがた犯されたばかりの幼いスリットは、陰毛が生える兆しもなく、まだ陰唇の発達も見ら
れない中身が全て見えてしまっています。
秘部の中央に、ポッカリと黒い穴が開いていて、そのすぐ上の方に、クリトリスを包みこんで
いるらしい薄い皮膜の盛り上がりが飛び出ています。

その光景に、わたしは正直魅了されてしまいました。
そして、こんなものを見せられたら、彼らと同様に自分も理性を失ってしまうだろう、と妙な
納得を感じていたのです。
わたしが妄想に浸っている間に、妹尾医師はベッド脇で膝立ちの姿勢になり、メグミの秘部を
覗き込む姿勢を取りました。

「さあ、診察してあげようか…メグミちゃんは、今年十二歳。市立A小学校の六年生なんだ…」
手の平を架空の履歴書かカルテに見立てて読みながら、妹尾は片方の手でメグミの秘部に指先
をさまよわせていました。
飛び出たクリトリスを指先で弾いたり、中指と人差し指を、中央の穴に挿し入れたりして楽しん
でいます。

背後からメグミを抱きかかえている高島は、両手の指でメグミの両の乳首をつまんで弄びながら、
妹尾の『診察』を覗き見て笑っていました。
「で、先月、家の近くに住む不良中学生達に捕まって一晩中輪姦されたんだね。それじゃぁ、
気が変になるのも仕方ないな」

あざける様な口調で、妹尾はメグミにそう言いましたが、高島に抱きかかえられたメグミは、
妹尾の言葉に反応した様子はありませんでした。
彼女が反応を現わすのは、高島が乳首を強く引っ張ったり、妹尾が陰部をグリグリと刺激した
時です。

「あ、はああ、ん」
高島の指先が、乳首をプルプルと弾くと、メグミは目を細めて、口から大きなため息を漏らし
ました。
その弾み具合からして、どうやら彼女は、乳首を勃起させている事が伺えました。

あんな小さな、子どもそのものの乳首でも、触られたら感じるんだ…わたしはこの時、そんな
事で頭が一杯でした。
「ふうん、あいかわらずエッチな場所しか反応しないんだな。それじゃ、今日はそこから治療
してあげようね」

そういいながら、妹尾は椅子に掛けていた上着のポケットに手を入れ、何かを探す様にゴソ
ゴソと手を動かしました。
しばらくして手を抜くと、何か小さな金属製の品物がいくつか握られている事が分かりました。
「?」

妹尾が手のひらを開いた時、わたしはそれが、クリップに似た形の、大きさ僅か三センチ程の
金具である事がわかりました。手術用具の様にもみえますが、専門的な知識が無いため、本来は
どのような使い方をするのかまではわかりません。
しかし、この時点で妹尾が何をするつもりなのかは、わたしにもすぐにわかりました。

そしてわたしの予想通り、妹尾はクリップ状の金具をひとつ摘み上げて挟む部分を広げ、メグミ
の乳首を挟んだのです。
「きゃあ!」
初めて、メグミが悲鳴を上げました。
顔を左右に振り、抱きかかえられた身体をくねらせて、必死に逃げようとしている様でした。

しかし高島の太い腕は、メグミを離す事はありません。
そうしている内に、妹尾はもう片方の乳首も金具で挟み、メクミに悲鳴を上げさせました。
「ああ、あ」
震える様なうめき声を上げながら、メグミは痩せた裸身をブルブルと震わせました。

正気を失った彼女も悲鳴を上げるほどの激痛が、乳首を襲っているに違いありません。
「ふふふ、いい反応をするな。でもまだ、ひとつ残っているんだよ」
その言葉通り、妹尾は、ひとつ手に残された金具を摘んでメグミに見せ付けた後、その手を
メグミの下腹部に近づけました。

「いやあああ」
先ほどよりも更に強迫的な悲鳴が、わたしの耳を貫きました。
「………」
妹尾医師の背中が邪魔になって、わたしの方からは何が起きたのか分かりませんが、おおよそ
の見当は付きました。

おそらく乳首と同様、陰部の小陰唇、あるいはクリトリスを、金具で挟んだのだと思います。
「や、やめてえ。痛い、ああ、助けてえ、いやあああ」
驚いた事に、この時初めて、メグミが明瞭な言葉を発したのです。
それは明かに正気の声でした。

しかし、二人の男は、その様子を見ながら、楽しそうに笑っているだけでした。
彼女が正気に戻ったというのに、何故笑っていられるんでしょうか…
後で聞いた話ですが、精神病患者というのは、何かのショックで一時的に正気に戻っても、
根本的に病気が完治した訳では無いので、すぐにまた症状が出てしまうのだそうです。

彼女の場合も、おそらくそうなのでしょう。だから二人は、メグミを見て笑っていられたのです。
そう、本当に楽しそうに笑っていたのです…
「…!」
廊下にいたわたしが、階下からの微かな物音を耳にしたのは、その時でした。

自分が危険な場所にいる事をあらためて自覚したわたしは、部屋の中の二人に気づかれない様に、
そっとその場を離れました。
幸い誰にも出逢う事無く、わたしは元来た階段を下り、玄関のドアから外に出る事ができ、ほっと
安堵のため息をはいた瞬間、グッと胃から込上げるのを辺り一面に嘔吐しました。

わたしは頭を鈍器で殴られた様な痛みを覚えながら、病室へと戻りました。
翌日、いつもと同様、妹尾医師がわたしの病室に回診に来ました。
内心複雑な思いを抱いていたわたしでしたが、この場で昨夜の話を持ち出す事など出来る訳も無く、
当たり障りの無い会話に終始しました。

その後、深夜に出歩く事はありませんでした。
昼間はいつも通り散歩をして、何度か精神科病棟まで足を伸ばしましたが、あれ以来、メグミの姿
を見かける事はありませんでした。
気にはなりましたが、まさかその後どうなったのかを妹尾医師に訊ねる事も出来ず、中途半端な気持
ちのまま、とうとう退院の日を迎えてしまいました。

帰宅するタクシーの窓から、精神科病棟が見えた時、わたしは後ろ髪をひかれる思いを感じてい
ました。
もしかしたら今夜もメグミが、或いは他の入院患者が、彼らにメチャクチャにされるんじゃないのか。
わたしは、この冷酷極まりない事実を闇に葬ってもいいのか・・・毎晩悩み続けました。

そして、わたしは悩み抜いた末、一通の封書を地検に郵送しました。
それから2週間後、病院の醜態が明るみになりました。病院長や理事の謝罪をはじめ、あの妹尾医師、
高島が容疑者として実名で報道され、連行される姿をマスメディアが大々的に放送しました。
その後、罪を認めた二人は身柄を送検され、余罪を追及されているそうです。

 

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